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hiro's Wondrous World.~自己満足ブログ~
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    100のお題021



    PART2─1

    「つばきちゃん…、元気でね?」

    とってもとってもお日様が高く上った気持ちの良い日曜日、私はお父さんの仕事の都合で隣町へと越すことになった。

    「うん!みさきちゃんもね!」
    「電話もするし、お手紙も書くからね!」
    「うん!つばきも絶対書くからね!」

    みさきちゃんとは家が近かったこともあり、いつも一緒でつばきの大切なお友達だった。

    「それにしても…かけるちゃん、遅いね…?」
    「うん…」
    「今日が最後だって知ってるのに、どうしたんだろ?」
    「……」

    かけるちゃんもみさきちゃんと同じくらい大切なお友達だった。
    お隣に住んでいたせいか、顔を見ない日は無かった。

    「でもさっき挨拶に行った時会ったから…」
    「それでも!見送りには絶対来るべきだよー」

    みさきちゃんはかけるちゃんが来ない事に少しイラついていた。

    つばきとみさきちゃんとかけるちゃんは、保育園の時からずっと同じクラスで今日までずっと一緒だった。
    これからもずっと一緒だと思ってた。
    それが当たり前だと思ってた。

    「じゃあ…、行くね?」
    「…うん。つばきちゃん、私のこと忘れないでね?」
    「みさきちゃんだって、つばきのこと忘れないでね?」
    「うん!ぜーったいに忘れないよ!」

    涙がこぼれ落ちそうになるのをこらえながら、私たちはそう誓い合って、お互いが見えなくなるまで手を振った。

    まだ小学六年生の私たちには、電車で一駅分という距離がすごく遠く感じた。




    ───あれから六年の月日が流れた。

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    100のお題020



    PART1─20

    ───RRRRRR。

    「ん゛っ」

    ケータイを布団の中から手探りだけで探し当て、アラームを止める。

    ──ん?
    なんで目覚まし時計が鳴ってるの!?
    此処私の部屋じゃん。
    あいつとデートしてたんじゃ…?

    状況が飲み込めないでいる私を見兼ねてか、テーブルに置かれたケータイが私を呼んだ。
    ──あいつ、からだった。

    「おまえいつまで寝てんだよっ!」

    …え?
    「デートするんじゃなかったのか?」
    「……」
    「約束の時間、もうとっくに過ぎてるぞ」

    そう言われて、迷子だった思考回路の糸がようやく繋がった。

    「あっ!」
    「もしかしておまえ忘れてたのか?」
    「う、ううん。忘れてなんか…っ」

    必死で言い訳となる材料を探しながら、今までの出来事が“夢だった”と認識した。
    うそだ…、うそだ…、うそだ…。

    「で?どうすんだ?」
    「え?あ、ごめんね?これからすぐ行くから!」

    私はそう言ってあいつの返事を聞かずに電話を切り、布団を慌しくたとみながら、カーテンが揺れる爽やかな秋風の中で、一人パニクっていた。

    「うそでしょー???完璧遅刻じゃん!!」

    まさかまさかまさか、夢だったなんてね。
    せっかくのハッピーエンドが全て夢だったなんてね。

    うわあぁーん。
    現実ってキビシーイ!

    私はこれから起こるかもれない“夢の続き”を夢見ながら、あいつの元へと駆け寄って行った。


    蒼い月
    蒼い月さんで配布されている100題の写真詩集です。
    写真に自由に言葉を紡いでいくというものです。
    何か感じたものがあれば、コメントお待ちしております。

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    100のお題019



    PART1─19

    今の私には「止まれ」よりも「進め」が似合っていると思った。
    「寄り道」よりも、二人で一緒に「歩く」のが自然だと思えた。

    「…ありがとう…」

    涙を拭いながら精一杯伝えた。

    「今までずっと不安だった…。私だけが…まだ片想いなのかなって…」
    「そんなことないよ」
    「でも正直な気持ち聞けて良かった…。嬉しい…」
    「うん」

    大きな手のひらでポンと軽く撫ぜられながら、幸せ一杯の気持ちに包まれた。

    「ごめん、な?だから泣くな」
    「…うん」

    ありがとう、ありがとう、ありがとう。
    何度も何度も心の中でそう叫んでいた。

    あまりにも私の顔がぐしゃぐしゃだったから、あいつが吹いちゃって、それにつられたかのように私も笑った。
    何だかあいつの顔を見るのが照れくさかった。

    私は化粧直しをし終えると、そのカフェをあいつと手を繋いで後にした。


    蒼い月
    蒼い月さんで配布されている100題の写真詩集です。
    写真に自由に言葉を紡いでいくというものです。
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    100のお題018



    PART1─18

    ご飯にはまだ早いからと近くのカフェに寄った。
    私は今もまだドキドキがおさまらない状態だった。
    カフェオレが届くと、すぐさま一口また一口と飲み干していった。

    テーブルにはあいつが吸った煙草の灰。

    それをぼんやりと見ながら、こういうのっていいなと思った。
    毎日会えるわけではない。
    だからこういう時間が大切で無駄にはしたくなかった。
    だけどただ向かい合って座ってるだけの空間が不思議と何よりも満たしてくれた。

    「どうした?」

    最初に口を開いたのはあいつだった。

    「え?」
    「ぼーっとしてる」

    不器用だったけど、意図も簡単に気持ちを汲み取ってくれる。

    「あ、うん。何だかこういうのっていいな…って」
    「?」
    「ううん。何でもない」

    私は何だか急に恥ずかしくなって、あいつの顔から目を逸らした。

    「ごめん…な」
    「え?」

    まだ中途半端に吸いかけた煙草の火を消しながらあいつが言った。

    「あんまり会ってやれなくて」

    ………。
    予想もしてなかった言葉にまた視線をあいつへと戻した。

    「オレもすんげぇ会いたいと思ってる」
    「……」
    「だけど今の仕事正直手を抜きたくないし、まだそこまで考えてやれるゆとりが今のオレにはないんだ…」

    優しい口調だったけど、どこか厳しかった。

    「でも気持ちは変わってないから」

    それを聞いた途端、胸の奥で詰まっていた物が一気にこみあげてきたかのように、涙が溢れ出た。

    「オレは今も愛してる」



    蒼い月
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    100のお題017



    PART1─17

    楽しい時間はあっという間に過ぎる。
    1時間が1分に感じられたし、1分が1秒にも感じられた。

    「面白かったねー」
    「あぁ」
    「観て良かったぁ!」

    映画を1本見終わる頃には売店で買ったポップコーンも底を見せ始めていた。

    「しかし意外だったなァ」
    「ん?」

    頭1つ分の差はあろうかと思われるあいつの顔を瞳を覗き見る。

    「いやァ、あそこであの展開は予想外だった」

    低くそして柔らかい声が、優しく私へと向けられる。

    「んー、でも最後はハッピーエンドだった!」

    私は明るいトーンで返す。

    「あはは!おまえはハッピーエンドが好きだよな」

    また心地良い柔らかい声が帰ってくる。
    確実に時間は流れているのに、それを感じさせないこの雰囲気が最高に好きだと思った。

    この雰囲気を作れるのはあいつしかいないと思った。



    蒼い月
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    100のお題016



    PART1─16

    あんなに不安だった毎日が嘘だったかのように、幸せは突然訪れた。

    急に休みが取れたらしく、あいつの方からデートに誘ってきた。

    「あー、でも、晴れて良かったなぁ」
    「天気予報では“雨”だったもんねー」
    「オレの日頃の行いがいいから晴れたに違いないっ!」
    「えぇー、違うよぉ。私の日頃の行いが良かったからに決まってんじゃん!」

    久し振りだったのに、会話が途切れることはなかった。

    「何時からだっけ?」
    「あ、映画?」
    「そ!おまえが観たいとゆー、“ジョニー様”のな!」
    「んもー、意地悪な言い方!」
    「あははははは」

    行きたい所は他にもたくさんあった。
    だけどいざ会うことになったら、その全部が意味の無い物に思えた。

    ただ会えるだけで良かった。
    ただ触れられるだけで良かった。

    こうやってただ笑い合えるだけで良かった──。



    蒼い月
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