もう少し出会うのが早かったら━━…。
彼の耳元で今にも泣き出してしまいそうな弱々しい声で、言った。
「誕生日プレゼント」
彼は少し照れながら綺麗にラッピングされた包みを私によこした。
「…え?」
「28日、だろ?少し遅くなったけど…。誕生日おめでとう」
私は彼の手からそれを受け取った。
だけどすぐには開封しなかった。
嬉しさよりも不安でいっぱいだったからだ。
誰もいない部屋。
少しの物音でも大きく聞こえそうだった。
「奥さんは…この事を知っているの?」
私は頭を上げ、彼の瞳を見つめた。
そして胸の奥でつっかえている事を、ゆっくりと、だけど力強く話した。
彼は少し曇ったような顔をして、首を横に振った。
そして静かに口を開いた。
「知らない」
私はどこかでこうなることを願っていたのかもしれない…。
「内緒でやった」
それがどういう意味を指しているのか、考えなくてもすぐに分かった。
夫婦が夫婦でなくなる瞬間━━。
涙が溢れ出そうだった。
気が付けば私は彼の胸に飛び込んでいた。
どうしても欲しかった。
どうしても手に入れたかった。
無理だと思えば思うほど、私の中で彼はどんどん大きくなっていた。
彼はこれまでのこと、そしてこれからのことを全部受け入れたかのように、私の頬を優しい指でなぞった。
そして目を細め、息も出来ないくらいの強い口づけを交わした。
愛を感じた。
唇を奪われるたびに、彼からの愛を欲しがった。
だけど。
どれ程の彼を知っても、私の口からは明るい未来なんて出て来てくれやしなかった。
「私たち、もう少し早く出会っていれば…もう遅すぎたんだよ」
「あなたは奥さんがいる。結婚してしまっているのよ」
彼の耳元でそう言って、彼は私の言葉を残酷なまでに愛おしそうに聞いた。
そして二人は離れた。
という夢を見た。
しかも実際に存在する人の夢を。
よくよく考えたら不倫だし、報われないし、プレゼントの中身はなんだったのか知らないし、いいことないよね…。
あーあ。
でもなんかリアル過ぎる夢だったので、書き残しておくよ!
いつか振り返った時に、爆笑しながら読むんだろうな!
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